2017.8.7(月)
前川前文科次官の明快発言とは異端の発言が続いた高級官僚のナイナイ発言症候群。 こんなことが子どもたちの間で流行ると困るな。
と、先日前川さんも当市での講演会で言ってたなあ。
不肖・「こんな人」の毒舌亭も甚だ同感であります。
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中村文則の書斎のつぶやき
締め切り日「記憶にない」
毎日新聞 2017年8月7日
ある原稿が締め切りに遅れている。困った。編集長に責められた時の言い訳を、前もってシミュレーションしておいた方がいいかもしれない。
「中村さん、原稿が遅れています」
「そのご指摘はあたらない」
「は? ちゃんと締め切り日、伝わってますよね」
「承知していない」
「待ってください。編集部のあなたの担当のX氏が、この日までにあなたから原稿が届くと言っています」
「X氏? ああ、あの人は出会い系バーに行ったりね、ヘヘヘ、そんなうわさがね……、編集者という地位に恋々としがみついて」
「X氏はそのバーで母子家庭の貧困を助けてたんですよ。あの方はその他にもさまざまにボランティアをしています」
「承知していない」
「X氏はその手帳に、ちゃんと締め切り日を明記しています」
「怪文書みたいなものじゃないですか」
「締め切り日、聞いたんですか、聞いてないんですか」
「記憶にない。記憶にないので、聞いていないと思われる」
「明確に言ってください。聞いたのか、聞いてないのか」
「記憶にない。記憶にないので、聞いていないと思われる。その日のメモも、しょうゆがついちゃったので全部捨てました」
「中村さん……、あなた最近、漫画『ONE PIECE』の特集マガジンに寄稿してますね?」
「その質問にお答えするのは、立場上、控えさせていただきたい」
「書いてますよ。あなた、小説家ですよね? 小説家なのに、文学の仕事より、漫画のエッセーを優先したのではないですか?」
「あのですね、確かに僕はその漫画が好きだし、ゴルフはしないけどページを開けば感動もするし面白いと思いますよ。でもですね、いいですか、漫画のエッセーを優先するなんてことは一度もないですよ。あなた、そんなことを言って責任取れるんですか?」
「編集部のみんな集まれ。こいつ変なこと言ってるぞ」
「あのですね、まるで私がですね、漫画のエッセーを優先したかのような、いいですか、そんな印象操作をですね」
「なんか急にキレたぞ?」
「原稿を順番通りに書くなんて、そんな規制にドリルで穴を開けるのが私の使命だ。私のドリルからは誰も逃れることができない」
「……はあ?」
「えー、私は中村の部下です。全部私がやりました。この長過ぎる赤いネクタイに免じて忘れてください」
「誰だお前! みんなも声を上げろ!」
「なんだこの人数は? こんな人たちに負けるわけには」
「こんな人たちって何だ!編集者も国民だ!」
「私のドリル……」
「ドリルドリルうるせえ!」
「……厳しい編集者目線を真摯(しんし)に受け止め、丁寧な上にも丁寧に、ご説明をしなければ、いけないのだろうと、そういうわけで、ございます」
「何で急に反省したんだ?まあいいや。……では改めて、締め切り日、聞いたんですか、聞いてないんですか」
「記憶にない。記憶にないので、聞いていないと思われる」
うーん、これでは駄目だ。他の言い訳を考えよう。